写真家 鈴木進次の旅のエッセイ 2006年6月15日発売

 「◆ 中国ゆったり五日間 ◆」 

ISBN-286-01046-5 C0026 

文芸社 1200円+税 

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第一部  2005年5月の上海
p16-17 中国の反日デモと旅行

四月に入って、突然テレビに中国各地で起きた.反日デモの様子が映し出された。

.北京市北西部で九日、日本の国連安全保障理事会常任理事国入り反対や歴史教科書への不満を訴える市民ら一万人以上が集まり、「打倒日本」などと気勢を上げてデモ行進、一部が市中心部などに向かい、日本大使館や大使公邸を数百-数千人の群衆が囲んで投石、大使館では窓ガラス約二十枚、公邸では数枚が割られた。

中国の首都でこれほど大規模な反日デモが仔われたのは、一九七二年の日中国交正常化以来初めてで、日中関係が深刻化することは確実となった。

デモ隊のスローガンに『愛国無罪』が叫ばれているからか、中国政府や公安当局は集会を規制せず、事実上容認した。

集会は同市海淀区中関村の広場で開かれ、反日団体によるインターネットの呼び掛けなどで集まった参加者は「日本と外交関係を断絶しろ」などと書いたプラカードや横断幕を持ち、日本国旗を焼いたり、日本製品排斥などを叫んだ。

デモ隊は市中心部へ向かう途中で警察の阻止線を突破、日系企業の街頭看板や日本料理店に投石、店の窓ガラスが割られた。

また中心部を東西に横切る目抜き通り、長安街を行進したり、日本大使公邸近くで日本車をひっくり返すなど市内は騒然となった。

中国南部の広東省広州市でも十日、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りなどに反対する約二万人の群衆が日系スーパー、ジャスコの入る商業施設前に集まり、投石などの抗議行動をした。

これに先立ち約三千人が、日本総領事館の入る市中心部のホテル周辺を取り囲み気勢を上げた。同省深刎市でも約一万人がデモを行った。

九日に首都北京で起きた一万人以上の大規模な反日行動が飛び火した形となった。日本政府の抗議にもかかわらず、過激な反日行動が収まる気配はなく、中国に進出する日系企業などの懸念も強まりそうだとテレビは報道を繰り返す。

広州、深刎で日本人の負傷の報告は入っていないが、上海市の日本総領事館によると、日本人留学生二人が九日夜、日本人であることを理由に、同市内の飲食店で中国人に頭部を殴られて怪我をした。

P18-19 一連の反日デモ発生後、日本人に負傷者が出たのは初めてで、由々しき事態になってきた。

日本政府の「謝罪」と大使館などの破壊に対する「賠償」要求に対し、中国政府は「デモの責任は日本側にある」とし、突っぱねてきたから、連日の中国反日デモ報遣と重なり、ゴールデンウィークに中国旅行を計画していた人たちが一斉にキャンセルに走った。

中国は「危険」だという印象が際だって浸透してしまったのである。

私は中国については熟知しているから、日本の報道に左右されるほど危機感は感じ,なかったが、津島と奥さんはさぞかし心配していることだろうと予測していた。

私から、どうするか聞いてみるべきか、四月十二日は思案しつつ出勤してしまった。

「M駅」に珍しく妻から電話があり、「津島さんから電話があって、また後で掛けるそうよ」との言付けがあった。

しばらくすると津島から熱海から掛けているという電話があった。奥さんと保養に来ていると前置きし、「中国はだいじょうぶか?家のが心配してさあ、明日からだとキャンセル料を取られると書いてあったけど……」

「俺の方からも電話を掛けようと思っていたんだ。熱海からじゃ電話代が大変だな?テレビでは大袈裟な取り上げ方をしているけど、中国じゃきっとこのことを国民に知らせていないと思うよ」

「日本人の学生が襲われたそうじゃないか?」

「中国政府も馬鹿じゃないから、これ以上こじらせると国益にならないことぐらい知っているよ。オリンピックを控え国際的な非難を警戒して、『五月一日のメーデー』と、『抗日闘争五・四記念日』のデモは押さえ込む。と思うよ」

「旅行代理店の語じゃ中国旅行のキャンセルが殺到しているそうじゃないか?修学旅行も取りやめた学校が多いそうだし・・…・」

「俺は心配していないけど、キャンセルしても構わないよ」

「どうしようか迷っているんだけど、鈴木がそう言うんだったらだいじょうぶだよな?」

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